近年、地球温暖化対策や家計の節約意識の高まりから、省エネ住宅への注目が高まっています。しかし、
「省エネ住宅って具体的にどんな住宅なの?」
「メリットは何があるの?」
と疑問に思っている方も多いかもしれません。
そこで今回は、省エネ住宅について、わかりやすく徹底解説していきます。さらに、省エネ住宅のメリットや補助金制度についても紹介するので、ぜひ家づくりの参考にしてみてください。
また、以下の記事では家づくりを行う際におすすめの断熱方法である『外断熱工法』に関して解説していますので、注文住宅を検討している方はぜひ一度チェックしてみてください。
省エネ住宅とは?
まずは、省エネ住宅はどのような住宅なのかを見ていきましょう。
3つに分けて解説していきます。
省エネ住宅はどんな家なのか
省エネ住宅とは、断熱性能や気密性を高め高効率な設備を取り入れて、エネルギー消費量を大幅に削減した住宅です。具体的には、以下の要素を満たす住宅を指します。
- 断熱性能の高い外壁、屋根、床
- 気密性の高い窓やドア
- 高効率な給湯器やエアコン
- 太陽光発電などの創エネルギー設備
このような設備などにより、冬は室内の暖気を逃さず、夏は外からの熱を遮断することで、少ないエネルギーで快適な室温を維持できます。
省エネ住宅の種類
省エネ住宅にはさまざまな種類があります。
- ZEH住宅
ZEH住宅は、『Net Zero Energy House』の略称で、年間一次エネルギー消費量をネットゼロにする住宅です。つまり、太陽光発電などの自家発電で消費するエネルギー量と、年間で購入するエネルギー量を差し引いた値がゼロになる住宅を指しています。
- HEAT20 G1
HEAT20 G1は、断熱性能に優れた住宅の認定制度です。HEAT20 G1に認定された住宅は、外気温の影響を受けにくく、冬は暖かく夏は涼しく快適に過ごせる、という特徴があります。
HEAT20 G1の断熱性能は、従来の住宅の約2倍と言われています。そのため、光熱費を大幅に削減可能です。
- BELS省エネ住宅
BELS省エネ住宅は、省エネ性能を評価した住宅です。BELSとは、『Building Energy Labeling System』の略称で、住宅のエネルギー消費量を星の数で表したものを指します。
BELS省エネ住宅は、省エネ性能が高いほど星の数が多い評価です。BELSの評価は、住宅の購入や賃貸の際の判断材料として役立ちます。
そのほかにも、長期優良住宅や低炭素住宅などのさまざまな種類の省エネ住宅があります。
省エネ住宅の補助金
省エネ住宅の普及促進のため、政府はさまざまな補助金制度を設けています。
- ZEH補助金
ZEH補助金は、ZEH住宅の新築・購入費用の一部を補助する制度です。補助金額は、新築で最大200万円、購入で最大150万円です。
対象者は、ZEH住宅の新築・購入者、一定の省エネ性能を満たす住宅、その他補助金制度の要件を満たす者となっています。
- 省エネ住宅改修等支援事業
省エネ住宅改修等支援事業は、省エネ性能の高い設備への改修費用の一部を補助する制度です。対象となる設備は以下のとおりです。
- 断熱材
- 窓
- ドア
- 給湯器
- エアコン
- 太陽光発電システム
- 補助金額
補助金額は、改修する設備や住宅の省エネ性能によって異なりますが、最大100万円まで補助を受けられます。
- 太陽光発電導入支援事業
太陽光発電導入支援事業は、太陽光発電システムの導入費用の一部を補助する制度です。補助金額は、導入する太陽光発電システムの容量によって異なりますが、最大40万円までとなっています。
- こどもみらい住宅支援事業
こどもみらい住宅支援事業は、子育て世帯が省エネ住宅を購入する場合に補助金を提供する制度です。この制度は、2023年度から新たに創設されました。補助金額は、新築で最大50万円、中古で最大30万円です。
対象者は、令和4年3月31日時点で、3歳未満の子ども、または18歳未満の子どもと妊娠中の女性がいる世帯、一定の省エネ性能を満たす住宅、その他補助金制度の要件を満たす者となっています。
- 地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、地域ごとに定められた省エネ性能を満たす住宅の新築・購入費用の一部を補助する制度です。補助金額は、地域や住宅の種類によって異なりますが、最大140万円まで補助を受けられます。
省エネ住宅のメリット
次に省エネ住宅のメリットを紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
光熱費の大幅削減! 具体的な効果と内訳
省エネ住宅の最大のメリットは、光熱費の大幅な削減です。省エネ住宅に住むことで、年間数十万円もの光熱費を削減できる可能性があります。
具体的には、以下のような効果が期待できます。
- 電気代:約30%削減
- ガス代:約50%削減
- 灯油代:約70%削減
省エネ住宅における光熱費削減効果は、主に3つの要素によるものです。1つ目は、断熱性能による効果です。断熱性能の高い省エネ住宅は、冬は室内の暖気を逃さず、夏は外からの熱を遮断できます。
そのため、暖房や冷房の使用量を大幅に減らし、光熱費を節約できます。
2つ目は、設備機器による効果です。省エネ住宅には、高効率な給湯器、エアコン、照明器具などが標準装備されています。これらの設備機器は、従来の製品と比べて消費電力が低いため、光熱費を節約できます。
3つ目は、ライフスタイルによる効果です。省エネ住宅に住むと、自然と省エネ意識が高まります。こまめにエアコンや照明を消したり、洗濯物をまとめて洗ったりすることで、さらに光熱費を節約可能です。
快適な住環境を実現
省エネ住宅のメリットの一つに、快適な住環境が挙げられます。省エネ住宅は、断熱性能や気密性能が高いため、外気温の影響を受けにくく、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を維持できます。
また、室温が安定しやすいという特徴もあり、断熱性能や気密性能が高いので、外気温の影響を受けにくく室内温度が大きく変化しません。従来の住宅では、朝晩と日中の温度差が大きかったり、部屋によって温度差があったりすることがありましたが、省エネ住宅であれば一年を通して快適な室内温度を維持できます。
省エネ住宅は、結露が少ないという特徴もあります。断熱性能や気密性能が高いので、室内と外気の温度差が小さくなり、結露が発生しにくいです。
結露はカビやダニの発生原因となるだけでなく、建物の劣化にもつながります。省エネ住宅であれば、結露によるトラブルが減る点はメリットです。
地球温暖化対策に貢献
省エネ住宅に住むと、年間1〜2トンものCO2排出量を削減できる可能性があります。これは、従来の住宅の約半分です。
例えば、ZEH住宅の場合、年間一次エネルギー消費量をネットゼロにすることを目標としているため、CO2排出量をさらに大幅に削減できます。
住宅全体のCO2排出量は、日本の総排出量の約20%を占めており、地球温暖化対策において重要な課題です。省エネ住宅の普及率が向上すれば、住宅全体のCO2排出量を大幅に削減でき、地球温暖化対策に大きく貢献できます。
住宅資産価値の向上
光熱費を大幅に削減し、快適な暮らしを実現できるだけでなく、住宅資産価値の向上も省エネ住宅のメリットです。省エネ住宅は省エネ性能が高いため、資産価値も高くなります。
近年では、省エネ性能の高い住宅は特に需要が高く、資産価値が向上する傾向です。資産価値が向上する理由としては、光熱費削減効果が挙げられます。
住宅購入者は、長期的な視点で住宅を選ぶため、光熱費などのランニングコストも重要な判断材料です。省エネ住宅であれば、光熱費を抑えられるメリットを訴求することで、購入意欲を高められます。
また、快適な住環境、環境への貢献なども資産価値の向上の要因です。快適な住環境は、健康や生活の質にも影響するため、購入者にとって重要なポイントとなります。
環境への貢献度が高い点をアピールすることで、環境意識の高い購入者に訴求できます。このようなことから、住宅資産価値の向上が見込めるでしょう。
税制優遇措置でさらにお得に
省エネ住宅は、税制優遇措置を受けられるメリットもあります。これらの優遇措置を活用することで、省エネ住宅の購入費用を軽減したり、税金を節約したりできます。
省エネ住宅取得に関する主な税制優遇措置は以下のとおりです。
- 所得税減税
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅等(長期優良住宅・低炭素住宅)を取得した場合、取得費の一部を所得控除できます。控除額は、住宅の性能や取得時期によって異なりますが、最大409.5万円です。
ZEH住宅を取得した場合、取得費の一部を所得控除できます。控除額は、住宅の性能によって異なりますが、最大455万円です。
- 固定資産税減免
長期優良住宅・低炭素住宅を取得した場合、固定資産税が最大5年間半額になります。ZEH住宅を取得した場合、固定資産税が最大10年間半額です。
- 住宅ローン減税
省エネ基準適合住宅以上の住宅を購入した場合、住宅ローンの金利の一部を所得税から控除できます。控除期間は最大13年間です。ZEH住宅を取得した場合、住宅ローン減税の控除期間が最大16年間となります。
省エネ住宅のデメリット
次に省エネ住宅のデメリットを紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
初期費用が高い
省エネ住宅は、光熱費を大幅に削減し、快適な住環境を実現できるなど、多くのメリットがあります。その一方、初期費用が高いというデメリットもあるのが事実です。
省エネ住宅の初期費用は、一般住宅よりも約10〜20%高額になると言われています。戸建て住宅の場合、120㎡の住宅で比較すると、一般的な住宅が約3,000万円なのに対し、省エネ住宅は約3,300万円〜3,600万円です。
省エネ住宅の初期費用が高くなる理由には、高性能な断熱材や設備機器を使用する点が挙げられます。省エネ住宅は、断熱性能や気密性能を高めるために、高性能な断熱材や設備機器を使用します。
これらの断熱材や設備機器は、一般的な住宅で使用されるものよりも高価なため、初期費用が高くなってしまうでしょう。
また、複雑な設計や高度な施工技術が必要となる場合があります。そのため、設計士や施工業者の費用も高くなってしまいます。
デザインの制限がある
省エネ性能を追求するためには、デザインの制限が出てきます。たとえば、断熱性能を高めるために窓の大きさを小さくしたり、日陰になる場所に配置したりする必要があることなどです。
そのため、開放感のある大きな窓や、好きな場所に窓を設置することは難しくなります。
また、吹き抜けは開放感や採光を取り入れられますが、断熱性能を下げる原因となるため、省エネ住宅では避けられることが多いです。外観デザインに関しては、太陽光発電システムを設置したり、断熱材の厚みを増やしたりするため、デザインが制限される場合もあります。
メンテナンスが必要になる
省エネ住宅は、高性能な断熱材や設備機器を使用しているため、適切なメンテナンスを行うことで、性能を維持し、長持ちさせられます。そのため、さまざまなメンテナンスが重要となってきます。
たとえば、太陽光パネルの清掃、点検、交換などが必要です。費用は、システムの規模や設置業者によって異なりますが、年間数万円程度となります。
また、断熱材は定期的に点検を行い、劣化や損傷がないかを確認する必要があります。費用は、点検内容や住宅の規模によって異なりますが、数万円程度です。
エアコン、給湯器、換気扇などの設備機器は、定期的に点検を行い、必要に応じて修理や交換をする必要があります。費用は、設備機器の種類や状態によって異なりますが、数万円〜数十万円程度となります。
省エネ住宅を建てる際のポイント
ここからは、省エネ住宅を建てる際のポイントを見ていきましょう。
それぞれ見ていきましょう。
信頼できる業者を選ぶ
省エネ住宅は高性能な住宅であるだけに、信頼できる業者を選ぶことが重要です。信頼できる業者を選ぶためには、過去にどのくらいの省エネ住宅を建ててきたのか・実際に建てた住宅の性能や住み心地はどうなのか・顧客満足度は高いのかなどを確認しましょう。
また、省エネ住宅に関する資格を持っているか・施工士などの専門資格を持っているスタッフがいるかなども業者を選ぶポイントになります。信頼できる業者を選ぶためには、複数の業者を比較検討することが大切です。
見積もりを取ったり、実際に住宅を見学したりすると、それぞれの業者の特徴や強みを把握できます。
長期的な視点で考える
省エネ住宅を建てる際には、初期費用だけでなく、ランニングコストや建物の寿命なども考慮し、長期的な視点で考えることが大切です。
- 初期費用: 土地代、建築費、諸費用など
- ランニングコスト: 光熱費、固定資産税、修繕費、リフォーム費用など
- 手放す際の費用: 売却手数料、解体費用など
上記のような費用を含む、ライフサイクルコストを考えるのがおすすめです。ライフサイクルコストとは、住宅を取得してから手放すまでの間に発生するすべての費用を合計したものとなっています。
また、将来の変化にも対応できる住宅を選ぶことが大切です。たとえば、家族構成の変化やライフスタイルの変化に合わせて、間取りを変更できるような住宅を選ぶようにしましょう。
また、災害に強い住宅を選ぶことも重要です。近年は、地震や台風などの自然災害が多発しています。耐震性や耐風性に優れた住宅を選ぶことで、災害時のリスクを軽減できます。
ライフスタイルに合わせる
省エネ住宅を選ぶ際には、家族構成を考えて選ぶことが重要です。たとえば、家族が多い場合は、広い間取りや多くの設備が必要となりますので、小さい子供がいる場合は安全面に配慮した間取りや設備を選ぶ必要があるでしょう。
また、ライフスタイルにも注目しましょう。家で仕事をすることが多い場合は、書斎やワークスペースが必要です。また、趣味で楽器を演奏したり、運動したりする場合は、防音室やトレーニングスペースがあると便利になります。
まとめ
今回は、省エネ住宅について詳しく紹介してきました。省エネ住宅は、断熱性能や気密性を高め高効率な設備を取り入れて、エネルギー消費量を大幅に削減した住宅です。
光熱費の大幅な削減や、快適な環境が実現できる住宅になっています。本記事があなたのお役に立てれば幸いです。